脳出血の原因と4つの対策!認定理学療法士が教える予防のコツ

目次

脳出血とは?

脳出血の原因や病態メカニズム、リハビリの重要性について解説する専門サイトのアイキャッチ画像

脳出血は、脳梗塞などと並ぶ「脳卒中」の一種であり、脳内の細い血管が破れて出血してしまう病気です。
ある日突然発症し、これからの生活や後遺症に対して、ご本人もご家族も不安を抱えられていることと思います。

まずはこの病気について正しく理解することが、希望を持って前向きにリハビリへ向かうための第一歩となります。

病態のメカニズム

脳の細い血管が破れて血腫ができ、周囲の脳組織を圧迫する脳出血の病態メカニズムのイラスト

私たちの脳には、太い血管から枝分かれした髪の毛のように細い血管(穿通枝)が無数に、脳の深部に向かって走っています。
脳出血は、この細い血管の壁が負担によってもろくなり、小さなこぶができ、それが血圧の急激な上昇などに耐えきれずに破裂してしまうことで起こります。
流れ出た血液は頭蓋骨という閉ざされた空間の中で「血腫(けっしゅ)」と呼ばれる塊となり、周囲の柔らかい脳組織を物理的に押しつぶしたり、圧力を高めたりして脳の細胞にダメージを与えます。

漏れ出た血液によって物理的に破壊されてしまった脳細胞そのものを再生させることは、現在の医学では困難です。
しかし、その周囲には血液の圧迫によって一時的に働きを停止しているだけの「生きた細胞」が存在します。時間の経過とともに血腫が吸収され圧迫が取れることで、これらの細胞の機能回復が期待できます。

主な原因とリスクファクター

ご自宅で家庭用血圧計を使い、脳出血の最大の原因である高血圧の管理を行っている様子のイメージ

脳出血の最大の原因は「高血圧」です。
長期間にわたって血圧が高い状態が続くと、血管に常に強い圧力がかかり、血管の壁が脆く傷みやすくなります。日本脳卒中学会の『脳卒中治療ガイドライン2021』等においても、日本における脳出血罹患への高血圧の集団寄与割合は76%に達すると報告されており、高血圧の治療が極めて重要視されています。

また、近年では高齢化に伴い、特殊なタンパク質が脳の血管に蓄積して血管がもろくなる「脳アミロイドアンギオパチー」という症状が原因となって出血を起こすケースも増えています。若い方の場合は、「脳動静脈奇形」などの血管の異常が原因となることもあります。

高血圧に加えて、過度な飲酒や喫煙、肥満、ストレスなどは血管の老化を早め、発症リスクを大きく高める要因となります。

脳出血の主な症状

突然の頭痛や運動麻痺、感覚障害といった脳出血の代表的な症状に直面している様子のイメージ

脳梗塞が就寝中や安静時に起こりやすいのに対し、
脳出血は日中の活動時(仕事中、入浴中、排便時のいきみなど、血圧が上がりやすいタイミング)に「突然」発症しやすいという特徴があります。出血した場所や大きさによって現れる症状は異なりますが、代表的なサインは以下の通りです。

  • 突然の激しい頭痛と嘔吐:
    頭の中の圧力(頭蓋内圧)が急激に高まることで起こります。
  • 運動麻痺・筋力低下:
    体の片側(右半身または左半身)の顔、腕、足に力が入らなくなります。
  • 感覚障害:
    体の片側に強いしびれが出たり、触られている感覚や温度がわからなくなったりします。視床と呼ばれる部位の出血などの場合、後に強い痛み(視床痛)を残すことがあります。
  • 構音障害・失語症:
    ろれつが回らなくなったり、言葉がうまく出なくなったりします。左側の脳が出血した場合は、言葉を理解したり話したりすることが難しくなる失語症を伴うことがあります。
  • めまい・ふらつき:
    小脳などで出血が起こると、ぐるぐる目が回り、立ち上がることすら困難になることもあります。

一般的な治療と回復の経過

急性期の厳重な管理を終え、回復期病棟で理学療法士のサポートを受けながらリハビリを行う様子

急性期~回復期の治療

発症直後の「急性期」には、命を救い、これ以上出血を広げないための治療が最優先で行われます。

脳梗塞の場合は血流低下を防ぐため血圧の低下に注意しますが、脳出血の場合は逆に血圧の上昇に注意し、降圧薬を用いた厳密な血圧管理を行います。 全身の状態が落ち着けば、可能な限り早い段階からベッドから起き上がる離床を図り、リハビリテーションを開始します。

長期間寝たきりになることで生じる筋力低下や関節の拘縮(廃用症候群)を防ぐため、早期からの介入が推奨されています。

MEMO

私も超急性期で勤務経験がありますが、
点滴・モニターを常につけて、介入前にカルテや看護師さんに状態を確認した上で、状態変化に注意してリハビリを実施していました。時にはリハビリをやらないことが最善になる場合もあります。

その後、状態が安定し「回復期」と呼ばれる時期に入ると、リハビリテーション専門の病院や病棟に移ります。ご自宅への退院や社会復帰に向けて、歩行訓練や日常生活動作の練習を、専門チームと共に行い、本格的な機能回復を目指します。

後遺症と予後について

脳の可塑性(神経ネットワークの再構築)によって機能回復を目指す希望のイメージ

脳出血は、出血の勢いで脳組織を直接圧迫・破壊するため、重篤な後遺症が残りやすい傾向があります。

『脳卒中データバンク2015』の報告によれば、脳出血患者の退院時に機能的自立(mRS 0~2)を果たしている割合は31.6%とされています。

また、全体では血腫量が15mLを超えると予後不良となりやすく、被殻出血では10mL未満、視床出血では5mL未満であれば退院時の予後は比較的良好であるというデータもあります。

しかし、後遺症が残ったからといって決して諦める必要はありません。人間の脳には、壊れてしまった神経ネットワークを迂回し、残された健康な細胞同士が新しい回路を繋いで失われた機能を補おうとする「脳の可塑性(かそせい)」という機能があります。

適切なリハビリテーションを継続することで、この能力を引き出し、機能改善につながる可能性があります。

退院後の生活とリハビリの重要性

退院後、血圧の記録や生活習慣の改善を行いながら、安全に自宅生活を送っている様子

日常生活で気をつけるポイント

脳出血を経験された方にとって、退院後の最大の目標は「絶対に再発させないこと」です。脳卒中全体の再発率は約50%とも言われており、徹底した自己管理が求められます。

  • 血圧の管理とお薬の確実な服用:
    医師から処方された降圧薬などは、自己判断で絶対に中断せず、毎日決まった時間に服用してください。また、朝と夜ご自宅で血圧を測る習慣をつけ、手帳などに記録して医師と共有しましょう。
  • 生活習慣の改善:
    食事の塩分を控え(1日6g未満が目標)、肥満の解消や禁煙、アルコール摂取量の調整に努めてください。
  • 環境の調整:
    寒暖差の激しい環境(冬場の脱衣所や熱いお風呂など)による血圧の急上昇(ヒートショック)に注意が必要です。
MEMO

急性期で勤務していた頃、再入院の方を多く経験しました。その方の多くが自己判断で薬を中断したり、元の食生活に戻っている方が多かったです。

継続的なリハビリが必要な理由

病院でのリハビリを終えて退院した後、生活の中で体を動かす機会が減ってしまうと、筋肉が硬くなったり体力が落ちたりして、せっかく獲得した動作ができなくなるリスクがあります。退院後も、ご自宅での自主トレーニングの継続や、専門家の視点を交えたリハビリサービスを活用し、身体機能の維持・向上に努めることが、より豊かで安心な生活を送るために非常に重要です。

脳出血でお悩みの方へ(認定理学療法士からのメッセージ)

脳卒中認定理学療法士が患者様に寄り添い、血腫による圧迫や身体の状態を丁寧に評価している様子

脳出血は確かに重篤な疾患であり、突然の出来事に戸惑われているご本人様、そしてご家族様も多いことと思います。

しかし、脳出血による症状は、脳細胞そのものの広範な損傷だけでなく、「血腫による圧迫」が原因となっている部分も大きく影響しています。
そのため、時間が経って圧迫が取れていく過程で、当初想定していた以上に改善度合いが良くなるケースも数多く存在します。

「もうこの手足は使えない」と最初から決めつけてしまっては、本来持っている回復の可能性を閉ざしてしまいます。

私たち療法士は、「何かできることはないか」を常に探し続けます。患者様お一人おひとりの状態を丁寧に評価し、一緒にできることを一つでも見つけていきたいと考えています。

また、回復の過程においては、最初から時間や効率だけを求めてしまうと、不自然な体の使い方(不必要な代償動作)が身についてしまうことがあります。 私たちは長期的な回復をしっかりと予測し、正しい身体の使い方を再学習させることが重要です。

一人で悩まず、ぜひ専門家である私たちにご相談ください。

  • 日本脳卒中学会『脳卒中治療ガイドライン2021』2021年
  • 小林祥泰(編)『脳卒中データバンク2015』中山書店, 2015年
  • 潮見泰藏(編著)『脳卒中理学療法学テキスト』アイペック, 2004年
  • 平山惠造、田川晧一(編)『脳血管障害と神経心理学 第2版』医学書院, 2013年
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