ご家族が脳卒中で倒れられたとき、
「脳卒中は遺伝するのだろうか?」
「自分も将来同じ病気になるのではないか?」
と不安を感じる方は少なくありません。
本記事では、脳卒中と遺伝の関係性、発症のメカニズム、そして退院後に患者様が直面する後遺症やリハビリの重要性について、分かりやすく解説いたします。ご本人とご家族が、正しい知識を持って前向きに生活を送るための第一歩として役に立てれば何よりです。
脳卒中とは?遺伝との関係性
脳卒中とは、脳の血管が詰まったり、破れたりすることで脳の細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、脳の機能が失われてしまう病気の総称です。主に「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」の3つに分けられます。
多くの方が心配される「遺伝」についてですが、結論として、一部の疾患を除いて
「脳卒中そのものが直接遺伝する」というよりも、「脳卒中を引き起こしやすい体質や生活習慣が家族間で似てしまうこと」が大きく影響しています。
ただし、特定の疾患においては遺伝的な要因が明らかになっています。
例えば、くも膜下出血の原因となる「脳動脈瘤」については、ご両親やごきょうだいなど一親等以内の家族に脳動脈瘤を持つ方がいる場合、発症の危険因子になることが分かっています。
『脳卒中治療ガイドライン2021』によると、そうした家族歴がある方の約4%に脳動脈瘤が発見されるとの報告があります。また、CADASIL(カダシル)と呼ばれる遺伝性の脳血管障害など、特定の遺伝子が関与するまれなケースも存在します。
病態のメカニズム
脳卒中は、血管のトラブルの種類によって大きく以下の3つに分類されます。
- 脳梗塞:脳の血管が血栓(血の塊)などで詰まり、その先の脳細胞が壊死してしまう病気です。
- 脳出血:脳の中の細い血管が破れ、脳の組織内に出血する病気です。
- くも膜下出血:脳を覆う「くも膜」の内側にある太い血管(主に脳動脈瘤)が破裂し、脳の表面に出血が広がる病気です。
主な原因とリスクファクター
遺伝的な体質に加え、日々の「生活習慣」が脳卒中の最大のリスクファクター(危険因子)となります。ご家族で同じような食事や生活リズムを共有していると、結果として同じようなリスクを抱えやすくなります。
- 高血圧:『脳卒中治療ガイドライン2021』によると、日本における脳出血の発症に対して高血圧が占める割合(集団寄与割合)は76%に達しており、最大の危険因子とされています。
- 糖尿病:糖尿病をお持ちの患者様は、そうでない方に比べて脳梗塞や心筋梗塞を発症するリスクが約3倍も高くなると報告されています。
- 喫煙と飲酒:喫煙は1日5本増えるごとに脳卒中のリスクが12%増加するというデータがあり、受動喫煙も発症リスクを高めます。また、過度な飲酒(エタノール換算で1日48g以上)は、すべての脳卒中、特に脳出血やくも膜下出血の発症リスクを上昇させます。

- 高血圧:
『脳卒中治療ガイドライン2021』によると、日本における脳出血の発症に対して高血圧が占める割合(集団寄与割合)は76%に達しており、最大の危険因子とされています。 - 糖尿病:
糖尿病をお持ちの患者様は、そうでない方に比べて脳梗塞や心筋梗塞を発症するリスクが約3倍も高くなると報告されています。 - 喫煙と飲酒:
喫煙は1日5本増えるごとに脳卒中のリスクが12%増加するというデータがあり、受動喫煙も発症リスクを高めます。また、過度な飲酒(エタノール換算で1日48g以上)は、すべての脳卒中、特に脳出血やくも膜下出血の発症リスクを上昇させます。
脳卒中の主な症状
脳卒中は「ある日突然」症状が現れるのが特徴です。
ご自身やご家族に以下のようなサインが見られた場合は、様子を見ずに一刻も早く救急車を呼ぶことが重要です。
- 体の片側が動かない、しびれる(顔・腕・足の麻痺や感覚障害)
- ろれつが回らない、言葉が出てこない(構音障害・失語症)
- 片方の目が見えない、視野が欠ける(視野障害)
- 立てない、歩けない、強いめまいがする(バランス障害)
- これまでに経験したことのないような激しい頭痛(くも膜下出血に特徴的)
一般的な治療と回復の経過
発症直後の「急性期」は、病院で命を救い、脳のダメージを最小限に抑えるための治療(点滴治療、血栓を溶かす薬の投与、カテーテル治療や開頭手術など)が最優先で行われます。
状態が落ち着くと、できるだけ早い段階からベッドの端で座る、立つといった「早期リハビリテーション」が開始されます。 その後、症状が安定すると「回復期リハビリテーション病棟」などへ移り、自宅へ帰るための集中的なリハビリ(歩行訓練、食事や着替えなど日常生活動作の訓練)を数ヶ月にわたって行います。
後遺症と予後について
退院時になっても手足の動かしにくさや、言葉の出にくさといった「後遺症」が残る場合も多いです。 ある調査データによると、脳卒中発症後5年間の生存率は55%、5年間で再び脳卒中を発症する(再発する)割合は約25%とされています。また、脳卒中を発症した方の3人に1人が、その後に認知症を発症しやすいというデータもあります。だからこそ、退院後の再発予防と継続的なケアが極めて重要です。
退院後の生活とリハビリの重要性
退院後、患者様が本当に困るのは「病院のようにいつでも助けてくれる環境がないこと」です。ご自宅の環境に合わせて動く必要があり、活動量が減って引きこもりがちになってしまう方も少なくありません。
日常生活で気をつけるポイント
再発を防ぐためには、ご本人だけでなくご家族も一緒になって生活習慣を見直すことが大切です。
病院でのリハビリ期間には制度上の期限(日数制限)があり、十分に機能が回復しきっていない状態で退院を余儀なくされるケースが増えています。退院後に運動習慣がなくなると、せっかく回復した筋力や関節の柔軟性が低下し、動くのが億劫になることで肥満が進むという悪循環を招きます。 再発予防や身体機能の維持・向上のためには、退院後もご自身の状態に合った「継続的なリハビリ」を行うことが欠かせません。
退院後のリハビリの重要性に関して詳しくはこちらをご覧ください。

脳卒中と遺伝でお悩みの方へ(認定理学療法士からのメッセージ)

ここまでお読みいただきありがとうございます!
ご家族が脳卒中になられたことで、「自分も遺伝で倒れてしまうのでは」と強い不安を抱えておられる方も多いと思います。 脳卒中認定理学療法士としてのこれまでの経験からお伝えしたいのは、「確かに体質としての遺伝的要因はゼロではありませんが、それ以上に長年の生活習慣の影響が圧倒的に大きい」という事実です。
家族は同じ場所で同じような味付けの食事を取り、似たような生活リズムで過ごすため、結果として同じような病気を発症しやすくなります。
裏を返せば、正しい知識を持ち、日々の生活習慣(血圧管理、減塩、適度な運動、禁煙)を改善するという基本的な予防策を徹底すれば、ご自身が発症するリスクも、ご家族の再発リスクも大幅に減らすことができます。 退院後の生活やリハビリについて、
「もっと良くなりたい」
「どう運動していいか分からない」
とお悩みであれば、お一人で抱え込まず、ぜひ専門家を頼ってください。
私たちは、最新の知識と技術で、皆様がより自分らしい生活を取り戻し、安心して未来を描けるよう全力でサポートいたします。
参考・引用文献
日本脳卒中学会『脳卒中治療ガイドライン2021』2021年
日本脳卒中データバンク『日本脳卒中データバンク2021』2021年










